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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そしてそのたびに、おかみさんのおマンさんに出逢いました。しかし、一心不乱のおマンさんはあたしには気づかなかったようです。おマンさんは蛭子神社だけではなく、白山神社、金比羅さんにも、朝詣りをして居りました。
あなたの退院の日、あたしも、病院の人ごみの中に立って、あなたを見送りました。三台の車で、一番前が大庭親分、次があなた、最後がおマンさんでした。
そのとき、あたしは、かたわらにいた豆八さんに申しました。
――あたし、金五郎さんをあきらめるわ。
――どうして?
――おマンさんに負けた。
――そうか。
――もう、若松から消える。
そうして、それきり、消息を絶ったのです。
二十五年ぶり、浅草でのことはあたしをおどろかせました。あなたが般若の五郎さんを救い、あたしに逢いたい、といったと聞いて、あたしの哀れな命の焼けぼっくいが、パチパチと、また、妖しげに、音を立てたのです。でも、浅草では、逢わなかった方がよかったかも知れません。
金五郎さん、
いつか、また、近いうちに、かならず、お逢い出来る日がありましょう。あたしはおマンさんには負けたと思っていましたけれども、ひょっとしたら、勝っているところがあるのかも知れないと考えるようになりました。