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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
手紙などではなにも意をつくしません。いずれ、すべては、ふたたび、お目にかかる日に。京より」
読み終って、金五郎は、巨大なためいきをついた。
(まるで、謎々じゃ)
お京の手紙は茫漠としていて、とらえどころがない。不気味である。
金五郎は、手紙を財布におさめ、それを上衣の内ポケットに入れた。店に出た。
豆八、源十をまじえ、勝則と四人、スズキを肴に、無意味な談笑を三十分ほどして、「六ゾロ」を出た。
月光の街を抜けて、家に帰った。
まだ起きて待っていたマンが、出迎え、
「お疲れさま。風呂がわかしてありますよ。……おや、漁は?」
「かえりに、食うてしもうたよ」
「明日のおかずは買わんでええと思うとったのに……」
「市場で、お前が釣って来い」
そんなへらず口をたたいて、笑いながら、金五郎と勝則とは、裸になって、浴室に入った。
脱いだ着物をかたづけようとしていると、夫の服から、なにか、落ちた。財布だった。
マンは、不審の面持で、拾いあげた。
(この財布は、東京で、チボから盗まれたというとったのに、……?)
横三寸、縦五寸、黒革で、止め金に銀の小菊が彫ってある。「ちきり屋」