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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「そうかあ?……」

まだ、半信半疑ながら、栗田銀五は、幾分、豆八のいうことを納得したらしい。直情径行、怒ると、「喧嘩の鬼」といわれている栗田も、案外に、人を信じやすい、好人物のところがあるようだった。粗暴で、一本気であると同時に、純情なところもあって、彼のためには、よろこんで生命を棄てる子分も何人かある、と噂されていた。

豆八が、ほっとした気持でいると、今度は、

「女」

と、鋭鋒が、光三に向いて来た。

「なによ、えらそうに、……」

「お前、「竹の家」の光三じゃったな」

「そうよ。それがどうしたの?」

「ええとこで逢うた。実は、友田親分の使いで、お前とこに行く途中じゃったんじゃ。先刻、おれが、今度の浪花節名人大会の用件で、親方のところに相談に行ったら――劇場に行くなら「竹の家」に寄ってくれ、と頼まれた。お前に逢うたら、もう行かんでええ。辻木の親父にな、こう伝えてくれ――友田の親分が、要之助君の結婚問題と、選挙のことで、どうしても打ち合わせとかにゃならんことがあるけ、晩に、家まで出かけて来てくれ。……って。……ええな? 忘れんなよ。……それから、豆八、島崎親分にいうちょけ――この若松ちゅう街が、どげな街か、知っちょるか。