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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「やあ、オヤジ、なにをこげなところで、ぼやッと立っちょるとですか。みんな探しよりますばい」
甲板番の新谷勝太郎が、千鳥足でやって来て、広間の方へ引きずって行った。
「ようし、わしが仲仕唄を踊ろう」
金五郎は、やけ糞のように叫んだ。拍手が起った。
若松みなとの
ゴンゾは花よ、
粋な手さばき
日本一……
金五郎は、滑稽な恰好で、天狗取り荷役のしぐさで踊りだした。
「日若座」は、朝から大賑いである。今日の一日のために、前々から準備がすすめられていたのであるから、この劇場を中心にして、いちどきに、百花が撩乱と、咲きみだれたような具合であった。入場客でごったがえしている。
「若松検番・春の温習会」――大看板をはじめ、幟や扁額にまで、いくつも、その文字が書かれてある。劇場の前や、舞台の両袖、花道にまで、無数といってもよい花輪がかざられ、そのなかには、それぞれ、ひいきの芸者を名ざしにしたものも多かった。その美しい人工花園の中に、とりわけ巨大な花輪が、一つ、誰からでも眼につく劇場の正面にあった。それには、「光丸さんへ・友田喜造」と書いてある。その横に、「猫丸さんへ・ドテラ婆」