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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
(どんなつもりで、お京は、また、やって来たのか?)
異様な不安を感じながら、金五郎は、かたわらのマンをちらと見た。
マンは、お京の方には無関心の様子で、光丸に、強い視線を投げている。
勝則は、また、別の考えに浸っていた。ほろ苦そうな表情で、索漠とした自分の気持とたたかっていた。
(あんなに、楽しそうに踊っとる。悲しみも、苦しみも、もう、光丸にはないんだ。おれのことも、考えてなんか居らんらしい)
芸のなかに、陶酔しきっているような光丸の舞姿に、勝則は、
(それでいいんだ。ああ、それでいいよ。別々の世界に、おれたちは居るんだ)
そんな放棄的な感情に荒々しくゆすぶられながら、急に、光丸が遠くなるのを、さびしい気持で耐えていた。
拍手のうちに、幕が閉まった。
「お父さん」
と、マンが金五郎をかえりみた。金五郎はびくッとした。
「あん?」
「光丸さんて、きれいな人ね。相手の妻太郎さんというのも美しいわ」
「うん、そうじゃなあ、……」
勝則は、立った。座に居られなかった。便所にというような風をして、階段を降りた。そのまま、木戸口から、表に出た。
「ちょいと、ちょいと、玉井の若」