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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
やがて、七八十人になった。女が二十人ほどまじっている。
黒ガキの牀柱を背に、一人の巨漢が、入って来る人間をしらべながら、名簿らしい大きな帳面に、赤インキで、しるしをつけている。六尺をこえるかと思われる、色の黒い、出歯で、額のせまい、いがぐり頭の四十男だ。ネルのシャツのうえに、「浜尾組助役」と染めぬかれた半纏を着ている。眼が、するどい。
「どうやら、揃うたようにあるなあ。三人ほど来んが、半パ者ばかりだから、もう、これで、よかろう。……新公、お前、親分へ――揃いましたから、お出まし下さい。……って、取りついで来い」
「へい」
新公と呼ばれた、二十三四らしい、やはり、半纏姿の頑丈そうな男が、密集している仲仕たちの間を、敏捷に、かきわけて出て行った。
まもなく、浜尾市造があらわれた。牀柱のところに来て、つっ立った。中肉中背だが裃でもつけたように、おそろしく両肩が張っていて、瓢箪のように細長い顔は、へんに青白い。疳性らしい青筋が、ミミズのように、額に太く這い、びくついている。
一座が静まると、浜尾は、沈痛な面持で、口を切った。
「今夜、みんなに集まってもらったのは、浜尾組の浮沈にかかわる一大事が起ったからじゃ。