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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
浜辺から、遠浅の沖の方へ、ぐんぐん、入って行く。首まで浸るあたりまで来て、「ワッショィ、ワッショイ」と、勇壮に、波しぶきをあげて練りまわす。それから、濡れたままで、街に出て来る。
各町内では、それぞれ、思い思いの山笠が作られていた。
正保寺町、新仲町、一帯を含めた十二区でも、一週間ほど前から、昼夜兼行で、一つの山笠が出来た。
「この山笠を、お京さんに見せたいなあ」
マンが、いたずらそうな微笑を含んで、金五郎にいった。
「なにいうちょるか」
金五郎は、お京の話になると、たじたじである。
「お父さん」
「あン?」
「こないだ話したように、今度お京さんが来たら、是が非でも、逢うてあげんといけんばい」
「逢うても、逢わんでも、ええちゅうのに……」
「ウフフ、逢いとうてたまらん癖に」
山笠には、一匹の巨大な龍が、中央の岩をぐるぐる巻きにして、天を睨んでいる。顔だけが三尺ほどもあり、蛇腹のついた胴の廻りが、やはり三尺、ガラスの大眼玉、棕櫚の頭髪、真鍮の角、鱗には、薄板を使って、すさまじいばかりの出来栄えであった。そして、昇り龍は、両肢に、右に菊、左に百合の花束を、掴んでいる。