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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

大束な菊と、百合の花とが加わると、龍の山笠は、一層、絢爛としたものになる。

「美しいなあ」

と、この山車をひく区内の子供たちも、大よろこびである。

「六区は岩見重太郎、七区は天の岩戸、十一区は羅生門、三区は提灯山じゃ。おれんかたの龍が、一番、ええど」

子供たちは、他区の山笠を見に出かけては、そんな自慢話をしている。

祭の前日、深更までかかって、すっかり仕上げた。

金五郎が、マンにいった。

「ひょっとしたら、勝則が帰って来るかも知れんど」

「どうして」

「お祇園さんじゃけ、子供といっしょになって、ワイワイ騒いだら、気分も紛れやせんかと思うてな、東京に、手紙を出しといた」

「あら、あたしも、帰って来るごと、一週間も前に、便りしたんじゃが。……でも、今に帰って来んけ、帰らんつもりでしょうよ」

ぎらぎらと、眼もくるめくような陽炎が、海も、山も、街も、ゆらめかせている暑い日である。風があって、筒抜けの青空を飛ぶ白雲の足も早かった。

街中を、多くの山笠が練り歩く。他区に負けないように、それぞれの意匠を凝らし、山車をひく子供たちの祭衣も、みんな揃いだ。区名入りの半纏、豆しぼりの手拭、赤や白の鉢巻、大男の子供たちが、二本の曳綱に群がって歩いて行くと、山車の中から、勇ましく、にぎやかに、鉦と太鼓とが鳴りひびく。