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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
鹿児島本線の下り列車に、小倉から、パン屋の浜田陸一が乗って来ていて、岩下から、女を受領した。
博多駅、下車。
画家の青柳喜兵衛が出迎えていた。青柳は、父の経営していた「隻流館」という、柔道の道場の裏二階に、夫婦で暮していた。そこの三畳の一室を、光丸の隠れ家に当てがった。……
「すると、その部屋に、今、光丸さんが居るわけじゃね?」
マンは、すこし呆れ顔でいった。
「ええ」
マンは、煙管を取りだして、キザミをつめた。火をつけ、胸を張るようにして、深々と、一服吸った。ほろ苦そうな顔で、
「光丸さんは、もう、妊娠何ヶ月かね?」
「六ヶ月くらいと思います」
「お母さんが、昔、お前の入っとるドン腹をかかえて、家出したり、うろうろしたり、したことがあったが、……」
突然、ガタッ、ピシャッ、と、すさまじい音を立てて、襖が開いた。
金五郎が、出て来た。
「馬鹿たれ」
その声とともに、勝則の左頬に鳴った、平手打ちのはげしい音が、深夜の空気に、しいんと、谺した。
金五郎は、つかつかと、仏壇の方へ歩いて行った。
牀の間と、くろがきの大黒柱を境にしてならんでいる仏壇の奥に、金色燦然たる阿弥陀如来が静まりかえって、これも黄金の蓮台のうえに、坐禅を組んでいる。