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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
金五郎は、甲板から、ロープを伝って降りて来た。六段に吊られてある棚の三段目に立った。微笑をふくんで、
「そら来い、そら来い」
と、調子をとるように、両手を上げ下げした。
汽船の舷側に、風変りな雛壇が作られたような具合である。長さ一間、幅は下に行くほど広くなる板が、ロープで、六段に吊られ、一段に二人ずつ、美しい雛のかわりに、ごつい沖仲仕が立っている。
艀の中にいる、「入れ鍬」と称する仲仕たちが、直径一尺三寸ほどの丸籠に、雁爪で、石炭を入れる。それが、一つずつ、棚立ちの仲仕によって、敏速に、下から上へ押しあげられる。天狗とり荷役である。
活溌な作業が、開始された。
「玉井、たまげたぞう」
金五郎の上段に立っている助役が、籠を送りながら、話しかけた。
「すみません」
「すまんこたない。殊勲甲じゃ。それでも、一時は、どうなることかと思うたわい」
「ボーシンに、話して行く間がなかったもんですから……」
「勘弁してくれ。さっきまでは、お前がケツ割ったもんとばっかり、思うちょった。浜に出てみりゃ、道具を積んだ小伝馬は居らんし……」
「今朝、眼がさめてから、わたしも気づいたんです。