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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
扉の外には、子分たちがひしめいている。
「お早ようございます」
挨拶すると、金五郎は、友田と息のかかる近さに寄った。
「友田さん、先日から、争議のことでは、お世話になっとります」
「いや、どうも、うまく運ばんでなあ、君たちには、気の毒に思うとるよ」
友田は、白々しく、頭をかいた。
「友田さん」
金五郎は、声を落した。
「うん?」
「わたしは、大きな声を出すのは嫌いですけ、静かに、話をしましょう。どうやら、あなたの子分連中が、外で、様子をうかごうとるようにある。これくらいの声なら、なにを話しとるか、わからんでしょう。ざっくばらんに話して、簡単に切りあげましょう。……友田さん、今日は、最後の話しあいに来ました」
「ふウン、最後ちゅうのは?」
「今度の争議、絶対に、うまく運ばんことが、わたしにはわかりました」
「ヘエ、そら、また、どうして?」
「あなたが、居るからです」
友田の鳶のような眼が、ギョロッと光った。嘲侮するように、金五郎を、見た。鼻で笑って、返事をしない。
「友田さん」
押しつける語調で呼ぶと、金五郎は、腹巻から、ピストルをとりだした。腰のところに低くかまえて、銃口を、まっすぐに、友田の胸板に向けた。