轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

その瞬間まで、金五郎は、お京のことを考えていた。

昔、江崎満吉との仲なおりの席上、「飛鳥」の舞台で、お京の糸で、この芸題を語ったことがある。そのときの思い出は、「三勝半七酒屋の段」を語るたびに、つねに、金五郎の胸の奥底を、チクチク疼かせるのが例であったが、今日も、眼をうすくとじて、よい気持そうにうなりながら、お京の幻影を胸にえがいていた。

(お京は、どうしとるか知らん?)

しかし、その遠い感傷は、銃声によって、瞬時に、ふっとんだ。同時に、右耳に焼けるような熱さを感じ、そこから流れ落ちる赤い血を見た刹那、

(四国の田舎で、これと同じようなことがあったが、……)

黒石家に養子に行きながら、白痴女ヤスを嫌って、離縁になった直後、果物に群がるカラスを追う鉄砲に、実弾をこめて、誰かから射たれた思い出が、あざやかに、浮かびあがった。そのときも、同じ右の耳を負傷した。

場内が、どよめいた。

しかし、数秒も経たぬうち、金五郎は、見台から、顔をあげた。左手に持った四角折りの手拭で、右耳をおさえると、平気な顔で、

「……世の味気なさ、身一つに、結ばれ、とけぬ片糸の……」