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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そのはげしさは、言語に絶した。
浜尾組の長屋でも、三十人近くの患者が出たため、附近一帯、二百五十人ほどの者が、隔離された。周辺の人達は逃げてしまった。
張りめぐらされた縄の中に、金五郎も、マンも、残された。
マンは、兄の林助が羅病したので、附ききりで、看病した。義姉のチヱと、子供たちとは、無理矢理に、隔離室に押しやった。
兄の枕許にいるマンの周囲で、八匹の猫が、一匹ずつ、死んで行った。
「チヱ、チヱ」
林助は、熱で真赤になりながら、囈言のように、妻の名を呼んだ。
「兄さん」
その声で、林助は眼をあける。妹の顔を見て、不審そうに、
「チヱは、どこに行った?」
「元気でいます。だけど、ここには、居らんわ」
「どうして、ここに居らん? 呼んで来い。つれて来てくれ」
「いいえ、いけません。ねえさんは、身重の大切な身体よ。病気がうつったら、大変です」
「馬鹿ぬかせ」
怒った林助は、憎悪の眼で、マンを睨んだ。起きあがろうとした。
「兄さん、……駄目よ」
「貴様、鬼か。おれが死にかかっとるのに、可愛い女房に逢わせんのか」
「いいえ、兄さん、死にはせん。今、逢ってはいけない」
「チヱもチヱじゃ。