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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

」

熱心に教えながら、お鶴の姿を左から、右へぐるりと一廻。

その歩行く方へ瞳を動かし、ぱちり音するかと二ツ三ツ瞬いて聞いていた。

「じゃ、あの、見せろッていいましたら、出しても可くって? 貴下。」

「可かろうとも。」

「神様に見せない前に。」

と口早に附け加えた。

「神様に。」

「ええ。」

その顔を上げた時、はらりと顔にこぼれかかる、髪の毛を、指に反らして払い、

「孔雀みたいな、あの、翡翠みたいな、綺麗な鳥が来て、種をこぼして行きました。

小田原の神様が、おとっさんに、拵えろッていったんですって。

ですから、あの、これは神様のものなんでしょう。」

見詰めつついう気構に、逆わず打頷き、

「そうか、神様のものか。むむ、そして、苞の中は茄子だといったが、まったくかい。」

「は、お初穂を上げに行くんです。あの、これが小さな、紫色の苗になりましてから、白髪のおとっさんが、あのね。

死んだおっかさんが着ていました、桃色の切だの、浅葱の切だの、いろいろ継合わしたちゃんちゃんこを着ちゃ、背戸へ出て、十国峠へ日が昇るの、大島へ月が入るの、幾度見たか知れないの、丹精して出来たんですもの。