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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

」

夫人は黙って聞くうちに、幾たびか目をしばたたいた。

「お鶴さん。」

と声が曇ると、

「…………。」黙ってこれも打悄れる。

「世間に人もないように、皆が、岬の巌になんぞ集って、もしか捕ったらどうします。」

と優しくいったが、何となく人をおさうる威が籠った。

これにはお鶴が事もなげ、

「いいえ、大丈夫、寅の刻までは海獺を極めて、ここに寝ていたって警察なんぞ、と六尺坊主がいったんです。」

「その方は、」

「え。」

「お前のその方は何てったの。」

おのずと居坐が更まって、夫人の声は凜々しかった。

「真鶴へ鮪の寄るのが、番小屋から見えるまでは心配なしだと申しました。」

夫人、

「そう。」

と頷くはしに、懐に手を差入れ。衝と一通の書の、字の裏が透いて見えて、いまだ封じないままなるを取って、手に据え、

「お前のおじいさんも何といいました。どういうことか知らないけれど、一粒種の可愛いお前に、盗賊の婿を娶ったのは、少い時の、罪のむくいだというんじゃないか。

悪い事をすればきっとそれだけの罪をうけねばならんのです。

御覧!

この手紙はね、私の旦那が今しがた、蒸風呂の中で、お書きなんだよ。