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したやそうわ
下谷叢話
永井 荷風
自序「下谷叢話」春陽堂、1926(大正15)年3月20日<br>第一~第四「女性 第五巻第二号」プラトン社、1924(大正13)年2月1日<br>第五~第十一「女性 第五巻第三号」プラトン社、1924(大正13)年3月1日<br>第十二~第十五「女性 第五巻第四号」プラトン社、1924(大正13)年4月1日<br>第十六~第二十二「女性 第五巻第五号」プラトン社、1924(大正13)年5月1日<br>第二十三~第二十九「女性 第五巻第六号」プラトン社、1924(大正13)年6月1日<br>第三十~第三十五「女性 第六巻第一号」プラトン社、1924(大正13)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,971 字 · 246 页
この年江戸市中には万年青の変り種を弄ぶことが流行した。武士僧侶までが植木屋と立交り集会を催し万年青の売買をなして損益を争うようになったので、これを禁ずる町触が出た。これ嘉永五年十一月十五日のことである。市井のこの一瑣事に枕山は詩興を催したものと見えて、「万年青」と題する七言古詩を賦した。その一節に曰く「吾俗好奇何至此。小草大花殆弟兄。昨日官家俄下令。罪其尤者価太軽。富家失望売諸市。花戸色沮厭品評。」〔吾ガ俗奇ヲ好ムコト何ゾ此ニ至レルカ/小草大花殆ンド弟兄ナリ/昨日官家俄カニ令ヲ下シ/其ノ尤アル者ヲ罪シ価太ダ軽シ/富家失望シテ諸ヲ市ニ売リ/花戸色沮ヒテ品評ヲ厭フ〕云々。
万年青流行のことは当時の俗謡大津絵にも唱われている。「この頃のお触書。士農工商ある中に、両替仲間相場立ち、大銭小銭を打並べ出しゃ、お白洲でしかりゃせぬ。しわん棒がこそこそとしまい置く。諸職人はわずかな銭でまじめ顔。なかにも慾深い万年青好きが、陽気をながめ、コイツは妙だとよろこぶ中に、きびしい御触。シモタ屋に料理茶屋、迷惑千万、火事場見物、切捨御免。」
十一月に入って冬至の節に、大垣侯戸田氏正の家老小原鉄心が溜池の邸舎に詩筵を開いた。