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したやそうわ

下谷叢話

永井 荷風

自序「下谷叢話」春陽堂、1926(大正15)年3月20日<br>第一~第四「女性 第五巻第二号」プラトン社、1924(大正13)年2月1日<br>第五~第十一「女性 第五巻第三号」プラトン社、1924(大正13)年3月1日<br>第十二~第十五「女性 第五巻第四号」プラトン社、1924(大正13)年4月1日<br>第十六~第二十二「女性 第五巻第五号」プラトン社、1924(大正13)年5月1日<br>第二十三~第二十九「女性 第五巻第六号」プラトン社、1924(大正13)年6月1日<br>第三十~第三十五「女性 第六巻第一号」プラトン社、1924(大正13)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,971 字 · 246 页

青空文庫

第七

晴又熱有リ。七月中旬ニ似ル。早ニ起キテ点検ス。墻垣尽ク仆レ。樹木半バ倒ル。(略)侯邸吏舎。商店農廬。或ハ砕ケ或ハ傾ク。水ノ屋ニ升ル有リ。風ノ簷ヲ奪フ有リ。噫亦甚シイカナ。昨夜舟橋秋月没セリ。吾訃ヲ聞キテ慟スルノミ。天何為ル者ゾヤ(略)〕

第七

天保九年戊戌正月元旦、梁川星巌大沼枕山らは池の端なる画家酒巻立兆の家に招かれた。星巌の集に「戊戌元旦、塩田士鄂、天野九成、大沼子寿、門田堯佐、名越士篤、三上九如、服部士誠ト同ジク不忍池上酒巻立兆ガ氷華吟館ニ燕集ス。子寿詩先成ル、因テソノ韻ヲ次グ。」といってある。しかし『枕山詩鈔』にはこの席に成った作を載せていない。

この日星巌とその社中の詩人とを招いだ酒巻立兆とはいかなる画家であろう。わたくしは僅にその名を『広益諸家人名録』と『江戸文人寿命附』とに見たのみである。立兆は安政二年十二月九日享年六十七を以て没したという。この日氷華吟館に招かれた賓客の中、塩田士鄂は津藩の文学随斎である。門田堯佐は福山侯阿部伊勢守正弘の侍読。名は隣、号を樸斎という。三上九如は名を恒、号を静一道人また赤城という。九如はその字である。『天保卅六家絶句』