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にっき

日記

宮本 百合子

09 一九二三年(大正十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页

青空文庫

と云ったと云う。

貴方は「男」だから※(感嘆符二つ、1-8-75)

◎

短篇の材料として面白い或心持。

机の傍。Aと自分。

Aは椅子により、自分は傍に立って居る。A、古い本を開いて見、自分はそれを覗き乍ら、

「ねえA、可笑しいでしょう。私、グランパと別れて仕舞うと、斯う云う本がちっとも見られなくなるかと思うと、惜しくて思い切れないの」

「馬鹿な! そんなものじゃあない」

「そうよ。欲張りでしょう。――勿論一種の自分への口実ではあるけれども……」

――○――

自分の未練を本にことよせる心持。これを、まえの、ブランケットとくみ合わせ、微笑し得る小品が出来そう。

中流人の常識で、離縁した女が、或は仕ようとする女が、

「別れるのもようございますが、あの男が買ったケットが如何にも心持よくて、もうそれが二度ときられないと思うと、真個に名残惜しゅうございます」

と云って泣きでもしたら、さぞ途方もなく感じるだろう。そこに、云うに云われない心持が流れて居る。

去った女房の荷物をそうたやすくは渡さない心持も、表面から見ると、欲張りらしくて、芯ではそうでもないテンメンたるものがあるのではないか。