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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
私は云うべき言葉を持たない。而も、彼と自分との精神的連絡と云うものは、第三流以下に属する。彼の実際的生活上の哲学は、自分の燃える心と同じ強さ、慾・徳なしには行かない。即ち、彼の仕事を思って、そこに光明を感じられないほど、感じられなく成った程、彼の所謂「仕事」は機械的であり、会社員的である。安心の出来る丈人生に深い連関を持った直覚がない。事務家が、社会的出世の為、勤勉を抜んでると全く同じである。
彼が英国に行きたいと云うのも箔をつけたい心持からだ。何処に、見ない世界を憧れる若々しい熱意がある。ペルシア行にしてもそうだ。
自分が、自分と云うものの真実を見きわめず、或思想によって自己と云うものを仮装させて、結婚したのは、大なる大なる誤謬であった。
彼の為に、自分を捨て切れず、又自己の為に截然彼をすてかねる。不徹底。
彼も、決して、自己を捨てる性格ではない。それだのに私の為に、命がけでもと云う。ここに間違いと無理がある。
仕事、仕事とかつぎ廻って、それを口実に、苦しい二人の人間を貫く性格的な不調和を糊塗しようとする。これは、真剣にとりあつかわれるべきことだ。