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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
彼は私の要求する気分の変化、活溌さなどは求めないのだろう。従って、心から望まないものを装う必要はないと云うことから、努める心持はない。自分がたまにそうだと、私を一人で外に出すことも好まないくせに。
楽しく、活々と気分を持って生活すべきであると云うことよりも、人生を変に悲劇化して、学問や努力は、宛然光なきもののように、心の得度をきめるのではないだろうか。
彼が独善的で友を求めないこと、友と云えば、只教師としその同輩と云う一時的の事務関係にすぎないのもそうではないか。
片町に居た頃、私が苦しい寂寥と孤独に耐えかねる心持で激しく泣いたのは、この、日常の苦るしい弾みなさに食われたのだ。
Aにかまわず、私は私で楽しめばよい。或人は斯う云う。然し、楽しんだ後、冷やかな、離反し疎隔した感の漲る人の許に戻るのは、一日の悦びを、三日の不快悲しさにすることではないか。
遂に、引籠る。心は一層暗くなる。彼に対する自分の批評は、それにつれて峻厳になる。何か、自己擁護的な本能の力で、そうなるようにさえ見える。
それを、自分から浅間しく思う。然し、此感じの幾度繰返しても消滅しない程、自分は生活を光輝あるものにしたい慾求が激しいのだろう。