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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
私が「私の心持」を持ち出すのは、彼に向って要求する「二人一緒に」の心持が拒まれ、歪められてからのことだ。
私が、自分の意欲で生活を作造しなければ安ぜられない人間であるのは、彼の為にも気の毒であった。はっきり自分がそれを見抜かず、甘い人道主義の感傷で、彼の性格をリモーデルし得るなどと思ったのは大きな、誤であった。人間の見方が浅かったのだ。
自分が離れようとすると、Aはやっきになる。愛の言葉を繰返す。
失おうとして、その尊さを覚えるのか、又は、失くしては惜しい、古着をため、古手紙をためて置くに類するしわさからか。
Aが、私が断然たる所置をとったら、どうするか。彼は、すべての仕事をすてて仕舞う。と云う。
その言葉は、私を深く考えさせる。驚かされる。その一事のためにばかり私は、幾度も決行しかねたのであった。
然し、
若し、彼が、云う如く私に命がけで愛を感じて居るとしたら、もう少しは私の中心要求と云うものが感じられ、私も彼に万事を許せる寛容さを、直覚し、相流通する筈だ。
そんなことはない。
毎日彼は幾度仕事仕事と云うか
而も、その仕事を、私と離れたことですて得るとしたら、仕事も亦、彼の生命を代表するものではない。