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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

隆治さんが二十五日から九日までうちへ泊ってそれからまた南へ行くということが友子さんと母上のお便りでわかりました。やっと無事帰ったと思っていたから、私の気持は苦しくて可哀相で、じっとしていられないようだし、素手でまた南へやるのはとてもしのびないから、大さわぎをして色んな人に聞き合せて南から決死隊で生還したという人の準備を聞くことが出来て、今日はどうぞこの包みが間に合うように、と願いながら緑茶を小さいカンにつめたり、かつお節をけずったり、紀さんに頼んで夜光磁石や、天文図やウィスキーの瓶詰などを陸軍の方から買ってもらう手筈をしたりしています、その前に南方ではビタミンBが命の親と聞いて、メタボリンを九〇〇錠送りました、が、あとから聞いたものはみんな体一つで何とかしのがなければならない時、油紙の氷ノウに入れて体につけていて、役にたてるものばかりで極く実際的に有効です。嬉しくなって、何でも揃えようと頑張っています。ジャングルへ迷い込んだっきりになるものが少くなく、それ等は磁石も天体測量も出来ず、ましてそれを食べるかつ節なんかは持ち合せない気の毒な場合が多数だそうです。