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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
けれどもこの人の場合は、百姓女をだました地主の貴族が、妻に対する良心と、自分の行動に対する責任感との間に苦しんで、一つの習作では自殺をさせ、他の一つでは結末がつかないまま、中絶していると云うような作者の精神の足どりが窺えるようなものです。メリメはああ云う作家だったから、そう云う形で未完成さが現れずに、ただのお話になってしまっていると云う違いが、面白く感じられました。「カルメン」はメリメの作の方がオペラより数等上ですが、あの音楽はなかなか面白いわね。覚えていらっしゃるでしょう? 貧弱な機械で聴いたけれども。
「娘インディラへ」の著者に触れて、歴史家の内には、原本を持っている人もあるようだと云うことは、読みながらも深く感じたことでした。歴史家の歴史を描き出しようもさまざまですからね。百年たたねば歴史の書けない歴史家もある。また、まず人がどっさり本を書いてくれて、その内で文部省の推選図書になったものをお手本にしなければ書けない人もあり。十四、五の女の子にむかっても、真面目な精神は、真摯な物云いをしていることは、読者に感銘深くありました。
この間うちから、スエコと話している事ですが、心の内に次から次へと湧き起る色々の心持や考えを、一旦言葉に出して、それを人の手で字に写してゆくと云うことは、何と困難な、時にはバツの