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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
だって私の紺がすりは戸棚に入っているけれど、あなたのお召しになるのがどこにも見付からないという訳で、しかもそちらにあるのかどうかもわからず、ともかく袷羽織とメリヤスの合ズボン下と、銘仙紺がすりを小包にしてどうやら夕飯を食べました。何しろ冬のジャケツを八月の下旬に私とこの字を書く人とで、やっとクリーニングに出した始末ですから。ポカンとしている時間が体にどんなに大切かということは、この頃身に沁みて感じて居り、そちらでお着になるものを順序よく手入すること位が楽しみの程度に周囲が整理されていたらどんなに心持がいいでしょう。眼の検査がすんで風呂にも入れ、もう少し歩けたら、万難を排して国府津へ行き、この冬を過したいと一日千秋の思いです。寿江子が勉強を始めたらピアノの音とレコードとオルガンとで、ああちゃんのキィーキィ声がかき消される始末で、私はその音で動悸が早くなる程厭です。私がかんしゃくを起すから温和なこの人まで神経をたてて、みているとこんなに字をまちがえているでしょう! ですから万端お察し下さい。あなたが乾いた単調さとお戦いになる程度にここでは音やごちゃごちゃとの組打がひどくて、ここの生活に一寸もなれない内、いきなりこちらはヘバってうずまきに巻き込まれたから大閉口の有様です(愚痴をこぼしてごめんなさい、こういう愚痴