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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

いきなりそういうと私が失望すると思っていらしたのでしょうね。たびたび会って私が長いのを自分でも充分わかってきていることが知れて、始めて口に出されたのでしょう。眼も全体がよくなればよいとわかれば悠々たるものです。大事な手紙が三日宙に迷ってもそれは我慢も致しましょう。何しろこの不随状態の人々の中で生活していれば。シャボン昨日お送りしました。『微生物を追う人々』と『支那イソップ物語』二三日内にお送り致します。イソップはどうもみつからないらしいのです。今も探してもらいましたけれど、二階に上れないものだから。それに引越をしてゴタついたままのところを更にゴタついたもので。

島田へ送った『栄養読本』のことは、今葉書で聞き合せました。十二日にはきっと着いていたと思いますが、いつぞやのお手紙にあった通り病気にならない人達は、「ハハアこんな本が来たわい、友子さん読んでおおき」「ハイ」という位のことで、それがどんな大きい意味を含んでいるかなどということは、あまり頓着しないのでしょう。人間の健全さと愚さとが、こういう場合にも私たちの生活にない合されていて、面白いものです。