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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
この御注文は嬉しいと思います。
栗林さんの支払いは受取りがあって、こちらで少し余分に払ったものだから、お釣りを切手で寄越してくれました。
富雄さんへの本は新書を三四冊みつけます。新しいのは中々手に入りませんから、手許にあるのを。大抵『アラビアのロレンス』『今日の戦争』『北極飛行』『阿部一族』『高瀬舟』等。
お友達への本代のことは心にかけていますが、そちらからのも手をつけずにとってあって、反って厭だということなので、子供さんのものや何かを送ろうと思います。暮までに金額にしてどの位のものが送られているか知らして頂けたら、子供へ上げるものもそれで見当がついて便利ではないでしょうか。
スタンダールは、すっかり読み返してみようとしていたのに病気になってしまいました。たしかに相当の作家です。「ナポレオン伝」などをみても、それを書いた動機がやはり一つの気力で、ナポレオンの没落後、パリの社交界人が、ナポレオンとさえ言わず、ムッシュウボナパルトと言って、極く卑俗な自分達のぬくもった利害の見地からばかり批評しているのをみて、ナポレオンの歴史的な価値を再認識しようとしたものでした。