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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
進むにつれて、岐路がなくなり、段々我々の進路がハッキリして来た。
暫くすると、川村が頓狂な声で、
「オヤ、この道はY温泉へ出る街道じゃありませんか」
と叫んだ。
「なる程、おっしゃる通りだ。では、御別荘はY温泉の近くにお求めなすったのですね」
住田医学士が合槌を打つ。
「当りました。その通りですよ。わしの新別荘はY温泉のはずれにあるのです」
わしの答えを聞くと、川村と瑠璃子とが不安らしくチラと目を見交わした。二人ともそれからは黙り込んでしまって、顔色も何となく優れぬ様に見えた。
「サア皆さん、わしの買入れた家というのはここですよ」
自動車がとまったのは、外ならぬ例の大牟田家の小別荘の前であった。瑠璃子が長らく湯治に来ていた家だ。つい近頃その庭に不義の子の死骸が埋めてあることを発見した家だ。
わしは莫大な費用を使ってこの家を手に入れた。大牟田家では是非なければならぬという程の別荘でもないので、とうとう手離すことになった。瑠璃子は今ではあてがい扶持の別邸住いなので、ついそのことを知らずにいたのだ。
案の定、姦夫姦婦の驚きは見るも気の毒な程であった。彼等は車を降りると、真青な顔をして何かヒソヒソ囁いている。