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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

「ナアニ偶然だよ。まさか里見が例の一件を知っている筈もなし。しっかりなさい。ここで妙なそぶりをすれば、却って疑いを受ける元だ。平気でいなければいけない」

川村は多分そんな風に瑠璃子を励ましているのだろう。

「サア皆さん、どうかお這入り下さい」

わしは先に立って門内へ這入って行った。玄関には先着の志村が新しい女中達を従えて出迎えている。もうこうなったら、川村も瑠璃子も、引返す訳には行かぬ。ビクビクしながらも、まさかあの恐ろしい嬰児殺しの秘密がばれていようとは知る由もなく、たかを括って客間に通った。

客間は襖から畳からすっかり新しくなって、見違える様に美しく飾られている。志村がわしの命令通り計らったのだ。

「里見さん、実に奇縁です。あなたはご存知なかったかも知れませんが、この別荘はもと大牟田家の持家だったのですよ。ここにいらっしゃる瑠璃子夫人なぞも、この家に長い間滞在されたことがあります」

住田医学士が何の気もつかず、お世辞のつもりで痛いことを喋り出した。

「エエ、そうですわ、わたくし、この別荘を売りに出したことを少しも存じませんで。……それにしても不思議なご縁でございますわね。