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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

女たちは、小伝馬船の上から、マンが、煙草をのむのに、妙な点火器具を使用していたのを、好奇の眸で、遠望していたものらしい。

「あんたはん」と、桃色傘の女は、いく度か、火をつけてみたあと、「これ、あてに、ゆずっとくなはれや」

「いえ、それは、……」

「タダやないわ。お金、たんと払うさかい」

「お金、頂いても……」

「二円、どう? あんたはん等、一日働いたかて、五十銭にも、ならへんのやろ。二円、大金よ。……ほな、三円」

「いやです」

桃色傘の女は、狐のように、眦をつりあげて、軽侮のいろを浮かべた。

「ゴンゾの癖して、三円なんてお金、いっぺんでも持ったこと、あらへんのやろ。黙って、ゆずったが、増しやで」

「ゆずりません。かえして下さい」

「ほな、五円、どや?」

まだ、未練があるらしい。後には、ライターなど、掃きすてるほどになったけれども、そのころは、珍品中の珍であった。それを、女仲仕風情が持っているので、洋装婦人は、自分たちが使う方がよっぽど似つかわしい、と思ったものであろう。権利があると思ったのかも知れない。

「失礼ですが」と、横から、新之助が、「それは、五十円でもゆずりますまいなあ。