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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
昨夜、親分子分の盃を拒否したことを遺恨の種に、子分をさしむけたにきまっている。貯炭場に来て、自分を探したが、いなかったので、新之助一人を槍玉にあげたのであろう。――金五郎は、そうと、信じた。
(男らしくない)
いつでも、自分はかげに隠れていて、子分を踊らせている。そんなのは、立派な親分とはいえぬ。――金五郎は、怒りと、蔑みと、憎しみとで、歯がみする思いだった。
いくつも黒い山になっている貯炭場の間を抜けて、町はずれに出た。そこから、山下邸の二階の屋根と、庭の銀杏とが、見える。
急いでいると、
「玉井さん、玉井さん」
と、呼びとめられた。
ふりかえると、「なんでも屋」の親父が、あわてふためいて、店から駈けだして来るところだった。橙色の禿頭を、太陽に光らせながら、金五郎に追いつき、息をはずませて、
「玉井さん、ちょっと、話がある」
「話は、また、あとで聞く。急用があるけ……」
「どこに行きなさる?」
「吉田磯吉親分に逢いに行くんじゃ」
「そんなら、ちょっと、わしの話も聞きなさい。まんざら、無関係のことでも、なかけん……」
「おっさんの話は長いからなあ」
「いや、一分。