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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「先生」に案内されて行くと、幾つも、廊下を曲った。
山下親方は、どこにいるのか、姿が見えなかったが、前夜の宴席にいた客人たちは、方々の部屋に、三々五々、屯していた。花札を繰っている組もあれば、女を加えて、酒盛をしている組もある。
突き当りの離れの前に来て、「先生」が、襖の外から、
「吉田の大将、玉井をつれて来ました」
「そうか、お入り」
「先生」が襖をひらくと、金五郎は、どきっとした。すぐに、馬鹿々々しくなって、赤面をした。部屋の中にいた女を、また、道後の女とまちがえたのである。
寝そべった吉田磯吉の腰をもんでいる、銀杏返しに黒襟の女は、金五郎から見える位置では、横むきになっていて、またも、金五郎に錯覚をおこさせた。こんなに横顔の似ている女は珍しい。それとも、一度逢ったきりの女を、こんなにも、明確に、記憶に再現する金五郎の方が、珍しいというべきか。
吉田は、腹這いになったまま、にこにこと、
「やあ、玉井君、よう来たなあ。遠慮せんで、中に入んなさい」
「失礼します」
金五郎は、六畳の座敷に入り、正座した。
「そう堅くならんと、楽にしたら、ええ。昨夜は失敬したなあ。