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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
さっきから、悄然と、地に潜る不景気な龍のことばかり考えて、気の滅入っていた金五郎は、マンの雄々しさに勇気づけられて、すこし、元気が出た。しかし、言葉では、
「おマンさん、女だてらに、あまり、事を荒立てん方がええよ」
と、たしなめた。
「それでも、身にふりかかる火の粉は、払わにゃならんけ」
「まあ、ならず者がやって来たら、逃げときなさい。……わたしは、ちょっと、森のところに、行って来る」
金五郎は、貯炭場を出た。
仲仕たちは「病院」といいならわしているが、実際は小さな小児科医院である。松野医師は子供専門なのだが、近くに医者がいないので、いつの間にか、仲仕たちの怪我人をかつぎこむ、外科医院みたいになってしまった。
石炭酸くさい廊下を抜けて、新之助の部屋に行った。若い代診に出逢ったので、容態をきいでみた。傷は二十三ヶ所ほどあるが、派手なばかり、どれも浅いから、命には別状ない――それを聞いて、安堵した。
病室の扉を、あけた。
金五郎は、ノッブを握ったまま、ちょっとの間、立ちすくんだ。まっ白に光る着物が、まず眼に入ったので、看護婦かと思ったのに、それは、昨日見た、洋装の、ハイカラ美人のうちの一人であった。