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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
新之助と君香との関係が、あたりまえでない。――そう、気づいたのである。
もう、繃帯はほとんど取っている新之助は、ベッドの上に、坐れるようになっていた。
友人を見ると、にこにこと、
「おめでとう」と、いった。
金五郎は、眼をぱちくりさせて、
「なにが?」
「おマンさんと、いよいよ、式をあげることに、定まったそうじゃないか」
「そんなこと、誰がいうんじゃ?」
「今さき、おマンさんが見舞に来てくれてな、そういうとった」
君香が、横から、微笑を浮かべて、
「あの、懐中ランプを海にほりこんで、遊び人を向こうに廻して、勝った人でっしゃろ。面白い人やわ。あんたはんと、こんな似あいの夫婦はあらへん」
「金さん、おれが退院するまで、祝言をのばしといてくれよ」
こういう風になって来ると、話は早かった。
「なんでも屋」が、仲介役を買って出て、玉井金五郎と谷口マンとは、結婚した。
彦島の弟子待に、小さい家を一軒借り、はじめて、世帯を持った。
四畳半に、三畳、それに、台所と便所とがついている。古ぼけて、屋根と壁との落ちた家、畳は破れ、天井も穴だらけ、夜になると、鼠と、蜘蛛と、蚤とが、しきりに活躍する。