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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「親方、しっかりしなさい」
金五郎は、永田を、ひっかついだ。たくましい金五郎のひろい肩のうえに、小柄な永田の身体は、セメント袋のように、軽々と、乗った。
「ああ、間に合うて、よかったわ」
サクも汗だくで、ほっとしたように、呟きながら、車夫へ金を払った。
列車が、プラット・フォームに、入って来た。
「大庭の親分さん、ちょっと、汽車を待たせといて下さい。切符、買うて来ますけ」
金五郎は、乗車券売場の窓口に行った。行先をいい、金を出した。
気がつくと、すぐ後に、くっつくように、サクが立っている。切符を買うつもりらしい。
「おサクさん、あんたは行かんでも、ええです。親方には、わたしが、ついとる」
「いいえ、あたしが傍に居らんことには、旦那は、赤ン坊とひとつことですから……」
マンが、横から、はがゆそうに、
「親分衆の集まるところに、おメカケさんなんか、行くものがあるもんですか。そんな出しゃばりしたら、永田の親分に、わざわざ、恥かかせるようなもんやわ」
そんな騒ぎをおぼろげに聞いていて、金五郎の肩のうえの永田杢次は、口の中で、なにか、しきりに、ムニャムニャと、呟く。