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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
俺だって、焼討ちに加わりたいくらいじゃよ」
「今日の用件というのは、そのことですか?」
「まさか、なんぼ腹が立ったとて、東京まで、焼討ちの加勢に行くわけにゃいかん。実はな、東京も大事じゃが、こっちにも、大事が出来かかっとる。そのことで、来て貰うた。明日、郵船のパナマ丸が入港する。荷物炭を千トンも積みこまねばならぬ大仕事じゃ。これは、聯合組の縄張りで、永田組が番に当っとるんじゃが、どうも、友田喜造の一派が、横取りしようという企らみをしとるらしい。「ドテラ婆」の子分が、現場に乗りこんで来るかも知れん、という噂がある。無茶は通らん筈じゃけど、無法者揃いじゃけ、どんな横車を押すかわからん。こんなとき、玉井が居りゃあ、なんの心配もないが、どうしたのか、まだ、帰って来んし……」
「親分さん、すみません」マンは、肩のちぢむ思いだった。「でも、永田の親方もあんまりですわ。親方が帰らんもんで、親方思いのうちのが引きずられて……」
「永田は、一昨日の晩、帰った。玉井のことを聞いてみたが、知らんというんじゃ」
マンは、心臓が、ひっくりかえったようだった。どきどきと、はげしく動悸が打って来た。