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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
四年ぶりで逢うのに、時次郎を見ていると、表に、愛馬の四歳馬がつながれているのではないかという錯覚をおぼえるのだった。日にこげているが、昔と変らぬ頑健さで、濃い粗野な眉や、節の太い手の指に、故郷の谷のにおいがあった。
「なにから話したら、ええか……?」
四年間の思いをこめる眸で、時次郎は、昔とは変ったマンを見る。
時次郎の眼に映るマンは、もう、四年前、太陽の光線のさすことの少い谷間で、煙草の葉を巻いたり、牛に餌をやったり、炭を焼いたりしていた百姓娘ではなかった。マンの顔から、野性が失せてはいなかったけれども、時次郎の知らぬなにかによって、別の彩りがつけられ、磨きがかけられていることは、疑うことが出来なかった。それは、不思議な一種の圧力になって、時次郎を圧迫する。広島の山奥では、マンに、こんなものを感じたことはなかった。それだけに、時次郎は、いよいよ、平静さをうしない、追っかけられるように、気分が尖って来るのを、どうすることも出来なかった。
「お父さんや、お母さんたち、元気でいなさるか知らん?」
そんなマンの当然の質問も、はがゆい気持で、
「元気で居りんさる」