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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

大庭春吉が今日あるのは、夫人の内助の功に、半を負っていると噂されるほど、勝気で、さばけた女である。もう五十に近いが、色艶が娘のように若々しい。

「金さん、番茶を」

「頂きます」

腰高障子のガラス越しに、音もなく、紛々と、降りしきる雪が、絣の模様のように見える。

「なあ、玉井」

「はい」

「わしが頼みというのは、ここじゃ。永田組が番下げになってしまえば、当然、解散。永田はええとしても、小方は路頭に迷う。そこを、お前が、跡を継いでくれることになると、小方は勿論、聯合組にも、筋金が入ることになる」

「親方を退けた後釜に坐ることなど、とても、出来ません」

「お前のその気持は、よくわかる。じゃが、それが、結局、永田を救うことにもなるわけじゃよ。永田の名を復活することは、もう、絶対に出来ん。重役連中も――玉井金五郎が責任者になって、玉井組の名で札を掛けるのなら、これまでの永田の荷役め権利を認める。……そういうとるんじゃ。……な、玉井、決心をしてくれ。わしが、頭を下げて、頼む」

大庭春吉は、そういうと、腕組みを解き、膝のうえに両手をのせて、軽く、頭を下げた。

金五郎は、仰天して、