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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

事の起りは、金物屋連中が花見をしているところへ、江崎満吉の子分たちがやってきて、

「ここは、おれたちの場じゃ。お前らは、他所に行け」

と、立ち退きを命じたことが、発端のようだった。通りあわせた金五郎が、見るに見かねて、仲裁、に出たのである。

「お前なんかの知ったことじゃない。すっこんどれ」

眼っかちの大男が、憎々しげに、怒鳴った。

「話がわかったら、いつでも、すっこみます」

「話はわかっとるじゃないか。おれたちがここで花見するけ、金物屋がどこかに行ったら、ええんじゃ」

「この場所は、あんたがたの土地ですか?」

「土地でなんか、あるもんか」

「先約でもしてあったのですか?」

「そんなもんは、しとらん」

「そんなら、あんたがたが、無理ですよ。金物屋さんたちは、一週間も前から、契約して、ここを借りていなさる。今日も、朝早うから、準備をしに来て、いま、皆さん、お揃いで、弁当を開かれたところらしい。それを、追いだして、ここを占領しようというのは、どういうわけですか?」

「どういうわけも、こういうわけも、あるもんか。ここの桜が一番きれいで、見晴らしもええけ、ここに、定めたんじゃ。