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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

知的な光と、情熱的な光とが、同居している、張りのある眸、「金魚」と綽名された大きな眼玉に、はるか遠くを夢みているような、緊迫したいろがただよっている。

――政治。

――政治家。

安五郎が、みずからの青春を傾けつくした一生の方角が、このときに、決定したのかも知れない。前から、政治や経済には興味を持っていたが、その下地に、多感な青年の正義感が、仕上げをしたのである。

(政治家になろう。そして、政治が悪漢どもの手によって、壟断される罪悪を、一掃したい)

安五郎の胸は、希望に燃えはじめていた。その安五郎の眼に、さきほど見た、玉井金五郎の面影が、はっきりと、印象づけられているのであった。

紺の幔幕の外を、「ドテラ婆さん」が、千鳥足で、通りすぎた。両腕を架しているお京と染奴とを、交互にふりかえりながら、

「芸者衆、見たかい? 玉井金五郎、惚れるなら、あんな男に惚れなさい。おれが若かったら、入れあげる。じゃが、馬鹿な喧嘩をしたもんじゃ。相手が悪い。金五郎どん、角助を待たんで、二三日うちに、江崎満吉から殺されるわい。太鼓判を押しとく」

島村ギンの予言したとおりであった。