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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「鬼」は、せせら笑って立ちあがった。大股で、悠々と帰って行った。
「お父っあん、すみません」
「マン坊、なあに、心配はいらん。お父っあんが、よう知っとる」
マンは、わっと泣き伏した。
善助は、罰金を収めるために、岡山に向かって、出発した。二円五十銭といえば、科料としては最低であったが、収めに行くのが大変である。大旅行といってよい。広島の山奥から、谷をわたり、山を越え、幾日も泊りを重ね、やっと、鉄道のあるところまで出て、汽車に乗る。岡山市にたどりつき、裁判所に、科料金を納入すると、また、同じコースを引きかえす。罰金の数倍の費用を使い、善助が、村に帰りついたのは、家を出てから十三日目であった。
善助は、疲れた顔も見せなかったが、日ごろ愛用していた鉈豆煙管、タバコ盆、タバコ入れ、等を、くるくると、油紙につつんで、仏壇の下の物入れにつっこんでしまった。
イワが、妙な顔して、
「あンれ、お父っあん、どがあに、しんさったな? 好きな煙草を、押しこんでしもうて……」
「おれが煙草を吸うもんじゃけえ、マン坊が心配して、罪をおかすようなことをする。今日かぎり、ふっつりとやめた」