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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「いえ、あたし、男なんかよりも芸の方が大事ですから」
笑いにごまかして、あたふたと、台所口から、部屋を出た。金五郎らしい足音が、近づいて来たからである。
「おかしな妓やなあ」
「金さんには、逢わんがええ。お京と金さんなら、なんか知らんが、気が合いそうにある。気が合うのはええが、合いすぎでもしたら、おれがおマンさんに、すまんことになるからなあ」
「そやけど、お京はんは、聯合組の親分衆や、会社のえら方に贔屓にして貰わんならんよってに、いっぺん逢うて貰とくが、ええのやがな」
「それも、そうじゃが……」
夫婦がそんな話をしていると、金五郎が、廊下から、のれんを排して、入って来た。
「やあ、今が朝飯じゃな?」
にこにこしながら、長火鉢の向う側へ、胡床をかいた。自分の家のような気やすさである。印半纏に、半ズボンをはいている。
「金さん、これから、仕事かね? 現場支度ども、しちょるが……」
「うん、五十トンばかりの焚料じゃ。夜業でやってくれちゅうことじゃったけど、繰りあげて、昼やらして貰うことにした。晩は、ちょっと、用事が出来たもんじゃけ」
「ときに、金さん、あんた、昨日、江崎の子分と喧嘩したそうじゃないか」