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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「おうい、若い衆」
と、金五郎は、二階に向かって、声をかけた。
踊り場のところに、「ノロ甚」が、顔を出した。眠そうな顔をしている。
「なんか、用な?」
「すまんが、みんな降りて来てくれんか」
「全部かや?」
「うん、居る者は、みんな」
「みんな、居るよ」
マンは、金五郎から堅く口止めされていたので、誰にも話していなかった。それでも、さすがに、気にかかってたまらないので、松川源十に、「今夜、大事な相談があるけ、どこにも行かずに、みんな、家に居っておくれ」と、頼んでおいたのである。夫婦や、家族のある小方たちは、長屋の方に家をかまえていたが、独身仲仕だけが、金五郎宅の二階に、八人、下宿していた。――源十、時次郎、清七、甚七、「中学生」の俊次、松本重雄、新谷勝太郎、城三次。
もう寝ていた者が多く、寝ぼけ眼をこすりこすり、降りて来た。
「夜中に、なんごとですか」
と、時次郎が訊く。
「みんな、すまんけんど、あるだけの提灯に、全部、蝋燭をつけてくれんか」
そういいつけておいて、自分は、ランプに、火を入れた。それから、思いだしたように、
「マン、永田に行って、ラムネを十本ほど、貰うて来てくれ」