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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
……それに、昔のおれなら、なにくそ、と思うが、娘の子の親となってみるとなあ……」
金五郎は、親友の弱々しげな口調を、さびしい思いで、聞いていた。
(新公は、変った)
新之助の立場や、苦衷は、充分に察していながら、金五郎には、兄弟盃をした親友の軟化が、やはり、さびしかった。情ない気もした。この若松では、ほとんど唯一の友人で、頼みにしていた男なのに、いま、その新之助が、自分を離れようとしている。裏切るとは思わなかったけれども、金五郎は、俄かに、孤独感におちいって、気が沈んだ。
反動的に、快活な調子で、
「わかった。わかった。よし、承知。日日と時間とを知らせてくれ。いつでも、行く」
「そうか。そうしてくれると、ありがたい。……それからな、この刀、二本とも、お前にやる。そのかわり、仲直りの場で、お前が喧嘩に使うた刀は、おれから借りたもんということは、いわんようにしといてくれ」
「わかった。わかった。もう、帰れ」
森新之助は、いずれ日取りが決定したら、知らせるから、と、ひどくなって来た雨の中を、帰って行った。
番茶を運んで来たマンは、怪訝な顔つきで、
「新さん、どうかしたの? えらい早よ、帰りなさったが……」