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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
それでなくてさえ、玉井さんと友田さんとは、なにかと張りあっているのに、女の問題がからんだら、どんなことになると思うの? あんたのために、玉井さんへ、友田さんの恨みが、また新しく行くと思わない?」
「ははあ、姉さんが、玉井さん、好きなのね」
「そうよ」
と、いってしまった。
「それなら、それでもええわ。あたし、お京姉さんと張りあうわ」
染奴は、蟀谷のいろを浮かべながらも、決意のほどを明らかにした。癇性らしい気質が、浮きあがった蟀谷の青筋をびくつかせ一重瞼の細い眼が、狐のように、つりあがっている。
お京は、妹芸者の決心が生やさしいものでないことを見抜くと、非常手段に訴える以外に、方法がないと覚悟した。
「染奴さん」
と、強い語調で、あらためて名を呼び、凄んだ眸で、睨みつけた。
「なによ」
と、相手も、もはや、挑戦的である。
「ほんとに、あたしと、張りあう気?」
「ええ」
「命がけで、でも?……」
「無論よ」
「アッハッハッハッ」
突然、お京は、男のような声で、笑いだした。どうしても、その哄笑が止まらないように、苦しげに、腹をよじらせる。
染奴は、むっとして、
「なにが、そんなにおかしいの? いくら、姉さんだって、あんまり、馬鹿にすると、承知できないわ」