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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
しかし、同じ吉田幕下として、友田喜造とは兄弟分のような間柄でなければならぬ筈だ。それなのに、友田へ反対する言葉を発しているので、源十と時次郎とは、ちょっと、意外の感じをうけた。
「妙ですなあ」
と、時次郎は、首をひねって、源十を見た。しかし、広島の田舎から出て来たばかりの時次郎にくらべて、さすがに場数を踏んでいる源十には、うなずけるものがなくもなかった。
「同じ吉田一家の中でも、いろいろと、また、派があるんじゃよ。友田喜造と花田準造――きっと、なんか、こみいった経緯があるにちがわん」
時次郎の耳に口をよせて、ささやくように、そんなことをいった。
幸い、金五郎の耳には、友田の罵声も、花田の声援も、どちらもはっきり聞きとれなかった。いい気持で、眼を細めて、語りつづける。三味線を弾いているお京だけが、二人の声に眼を光らせたが、なにもいわずに、浄瑠璃に調子を合わせた。
花田準造は、でっぷりと肥った色白の身体づきで、眼の光にやわらかさがあった。昔、川舟のりをしていたとは思われない。男ぶりもよく、二枚目の役者のようでもある。しかし、吉田磯吉が、戸畑の江木弥作親分の身分であった花田を、懇請して自分の子分に貰いうけただけあって、今では吉田一家の智慧袋として、重きをなしているのであった。