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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「ほんとに、今度は、御厄介をかけました」
と、挨拶した。
「まあ、無事に仲直りがすんで、よかった。これというのも、おれたちの力よ。江崎満吉のようなうるさい男が、外の者の仲裁なら、どうして受けるもんか」
「そのとおりです。ありがとうございました」
かえされた盃を、ぐっと、一息に飲んで、
「ときに、玉井君」
「はあ」
「君は、小頭の組合を作る運動を、しよるちゅう話を聞いたが、ほんとな?」
「ぜひ、作りたいと思いまして……」
「ぜひ?……ぜひ、ということはないじゃろう。この間から、君に逢うたら、いっぺん、いおうと思うとったんじゃが、……どうも、君の考えは、間違うとるようにある。この若松というところは、石炭あっての港、石炭あっての町、ちゅうぐらいのことは、君に説明するまでもないが、その石炭は、三菱とか、三井とか、貝島とか、麻生とか、そういう荷主さんの炭坑があって、はじめて、この若松港に出て来るんじゃ。いわば、おれたちは、その荷主さんのおかげで、食わせて貰うとるというても、ええ。こうやって、一杯の酒の飲めるのも、そのおかげじゃ。……玉井君、そうじゃろうが?」
「おっしゃるとおりです」