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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
渡辺ノ綱に扮する、何とかいう役者が、玉井のオヤジさんにそっくりですよ。そして、また、鬼ちゅうのが、友田喜造に、よう似ちょる」
「そんなこと、いうもんじゃないわ。今夜は、その友田さんの肝煎りで、江崎満吉と、仲直りの式をしとるのに……」
そうはいったけれども、マンも、一度、その芝居を観たい気持にもなって来て、三内町の旭座の方へ、歩を運んだ。光子にも意向を聞いてみると、大よろこびで、観る方に賛成したのである。
森新之助から、招待券は来ていた。金五郎から、祝儀もやってある。新之助が、福岡監獄に服役中、知りあいになった熊丸虎市と、共同で、この、関西若手歌舞伎一座の興行をやっているのだった。しかし、まだ、表面には、森新之助の名は出ていなかった。それというのが、やはり、吉田一派との軋轢に原因しているのである。
マンは、木戸銭を払った。一人五銭。「虎ノ間」は、最下等の立見席だ。檻のように、張りめぐらされた木柵の外部から観るのである。この興行は、蓋をあけてから、連日、大入満員をつづけているようだった。二階や、桟敷はもとより、「虎ノ間」も、ぎっしりと詰まっていて、立錐の余地もない。