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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
おたくの御主人のような方に、ぜひ、政界に乗りだして欲しいですなあ」
「きっと、いやがるでしょうよ」
そんな会話を、大戸に手をかけたまま聞いている青年、井上安五郎の、金魚のように大きな澄んだ瞳が、決意に似た、なにかをきらめかせて、強い光を放っていた。
――政治。
――政治家。
そうして、庶民の生活を圧迫し、政治を毒する社会悪への怒り、その一掃――それは、すでに、この青年の青春の唯一の方向となっていた。
(玉井金五郎という人と、一度、逢って、ゆっくり、話がしてみたい)
その思いも、強くなりつつあった。
三升釜を買ったので、これを俊次が持ち、光子は、マンが負ぶった。
停車場の方角へ歩いた。「ステンショ」だけには、早くから、電燈が引かれていた。まだ、終列車まで、いくつかあるとみえ、暗い夜の中に、その一角だけ、煌々と、光を発散している。汽笛や、石炭貨車を連結したり、離したりするかんだかい金属音が、鉄道構内から、しきりに、ひびく。
「おうい、おマンじゃないか」
後から呼ばれた。林助が、ほろ酔いで、近づいて来た。にやにやしながら、
「おマン、さっき、老松町の角で、金さんに逢うたがなあ、別嬢の芸者と、二人づれじゃったど」