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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「居ります」

「鍵は、誰が掛けたとかい?」

「姐さんが掛けました」

「馬鹿にしとる」

金五郎にしてみれば、若干の秘密があったにしたところで、女の誘惑を蹴とばして、帰って来たのである。お京へ心を惹かれた点は、マンにすまぬ、と思うけれども、最後の線では、マンへ貞節を通している。女房から、感謝されてもよい、と、考える。といって、別に褒められたい気持もないのだが、締めだされたりすると、

(おれのような亭主が、どこにあるか?)

そんな反撥心が、湧いて来るのだった。

請負師仲間では、女道楽、女郎買い、芸者買い、メカケ狂い、二号、三号、四号、の設置、等は、日常茶飯事となっている。女を多く作るだけ、甲斐性のようにも、いわれる。まして、「据え膳食わぬは、男の恥」、女の方から持ちかけられて、白旗をかかげる者は、笑い者になるほどだった。

それでも、金五郎は、そんな通俗に流れまいと考えて、これまでもやって来たし、今夜とて、美しい桃色の虎口を脱して来たわけである。それだけに、締めだされたことが、奇妙に、腹が立った。酒の酔いも、手つだっていた。

「時やん、もう、寝れ」

そういって、大川時次郎を、二階に追いあげておいてから、寝室に、殺到した。