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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

雨戸をめくっているのは、二十五になる、力自慢の城三次。

外の掃除をしているのは、「カマキリ」という綽名の、背のひょろ高い新谷勝太郎。二十七歳。

雑巾がけは、伝馬番の松本重雄。三十一歳。

竈の前にしゃがみ、くすぶる煙に、ぼろぼろ、涙を流しながら、火吹き竹を吹いている「六ゾロの源」は、大根をすっている「ノロ甚」に、話しかける。

「おい、甚公、あきれたのう」

「なにがや?」

「今、おれたちが、八人でやっとる仕事を、毎朝、姐さんが、一人で、やっとったんじゃで」

「そういえば、そうじゃなあ」

「これでも、まだ、前の晩から、米が磨いで、釜に仕掛けてあったり、味噌やら、豆腐やら、大根やらが、買うてあるもんじゃけ、楽なんじゃ。買いだしも姐さんの仕事、それから、洗濯、縫い物、ワラジ作り、そして、現場にも出る。……こりゃあ、大事ど」

「猫の餌も、やらにゃ、ならんしなあ」

「なんでもない、当りまえのことのように考えとったことでも、ぶっつかってみると、ほう、と思うようなことがあるもんじゃのう。姐さんは、八人力じゃないか」

「ボーシン、大発見をしたわい。こりゃあ、うちの姐さんだけじゃないばい。